大切な事は利用者に共感すること
利用者の中には感情を表現するのが苦手だったり、「迷惑をかけたくない」と本音を隠したりする人もいます。そのため、利用者が心身ともに安心・満足できるケアを行うためにも、介護士は相手の気持ちを理解しておかなければなりません。

本音を引き出すのは難しい
「本音を伝えるのが得意」という人はあまりいません。そして、関係が親密になるほど、「トラブルに巻き込まれたくない」「嫌われたくない」という気持ちから、本音を隠そうとする傾向があります。介護士と利用者の関係は長く親密になりがちなので、このような状況になることも少なくないんです。しかし、本音を伝えるのが苦手なのであって、本音を話せないわけではありません。利用者が本音を伝えられない場合、それは「この人になら本音を話せる」と思えるような信頼関係をまだ築いていない可能性があります。
誰でも本音を他人に話すのは、勇気がいりますよね。利用者は「ありのままの私を受け入れてくれるだろうか?」と不安に思っています。その不安から自分を守るために、信頼していない人には本音を伝えない傾向があるんですが、利用者とのコミュニケーションにおいて共感することは、利用者の気持ちに寄り添い、安心感を与える効果があります。
共感は相手と一緒に感じること
「共感」は利用者の喜びや悲しみを感じ、気持ちに温かく寄り添うことを指します。共感といえば、相手に感情移入して自分のことのように喜んだり悲しんだりすることを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?これを「情動的共感」といいます。
情動的共感が強い人ほど相手の立場を理解できるように思えますが、実際には「相手の気持ちがわかる」と思い込んでいるだけの場合もありますよ。誰かが泣いているのを見て痛みを感じるとき、その気持ちが相手のものか、それとも自分のものなのか、区別しにくいことがあるからです。そのため、情動的共感だけで相手を理解しようとするのと間違ってしまうこともあるので注意してくださいね。
情動的共感と似た言葉に「認知的共感」があります。認知的共感は、相手の感情や思考に気付き、理解できる能力です。つまり、目の前で悲しんでいる人がいたら、「今、この人は悲しい気持ちになっているんだ」と理解する、といったようなことですね。
場合によっては、利用者やご家族に情動的共感ができないこともあるでしょう。しかし、介護士として認知的共感をすることは可能ですよ。介護現場では相手の気持ちを自分のことのように受け止める素直さと優しさ、そして相手の気持ちを認識し、介護士として何ができるかを考える冷静さの両方が大切なんです。