共感に必要なスキル「傾聴力」
介護業界では相手の気持ちをくみとりながら話を聞くことを「傾聴」と呼んでいます。傾聴によって相手の本音を知ることができるため、心の奥の悩みや不安・不満を解消するきっかけになります。

傾聴とは?
「傾聴」は、相手の話を真摯な姿勢で聴き、相手の立場に立って理解しようとすることです。受け身で聞くだけではなく、能動的で主体的なコミュニケーションが求められます。介護士にとっての傾聴は、利用者の話をじっくりと聞き、相手の気持ちに寄り添うこと。利用者1人ひとりに適切なケアを行うためにも重要なスキルですよ。
なぜ傾聴が重要なのか?
相手を信頼していないと「この人には話したくない」「この人には世話をされたくない」といった自分を守る感情が生まれます。
イメージしやすいように、ある老人ホームでのエピソードを紹介しますね。
介護士のAさんがトイレに行くDさんを見ていたら、新人介護士のBさんが付き添う場合は歩いていくのに対し、ベテラン介護士のCさんの場合は車いすに乗って移動していることに気付きました。なぜ新人とベテランで対応が異なるのか聞いてみたところ、「Bさんは利用者の体調を気にしながら対応してくれる。前にも転んだことがあるから歩くのには不安があるけれどBさんがいるから心強い」と答えたそうです。Bさんは積極的に傾聴していたのでDさんの状態をきちんと把握することができ、Dさんも「自分を受け入れてくれている」と感じて安心感が生まれたため、ケアに協力的になったのでしょう。
傾聴の効果
まずは信頼関係を築きやすくなること。相手が自分の話を真剣に聞いてくれていると感じると、不安や悩みを分かち合えるという安心感が生まれ信頼されるようになります。信頼関係が深まると相手はさらに心を開き、協力的な態度を示してくれるので、ケアの質も向上しますよ。
また、話を聞いてもらうことで、自分の感情や考えに気付くきっかけにもなります。話すことで自分の考えを整理できるので、新しい発見を得られるでしょう。
傾聴によって相手は抱えていた不安やストレスを言葉にして解放できます。話すことで胸の内にたまっていたネガティブな感情がなくなるので、心理的にも安定しますよ。
相手の気持ちに寄り添うことが大切
傾聴力を高めたいなら、相手の気持ちに寄り添うことが大切!「何を話しているのか」ではなく、「何を伝えたいのか」を理解することが重要です。イメージしやすいように、会話の具体例をいくつか出してわかりやすく解説している書籍を紹介するのでチェックしてみてくださいね。
また、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズは、傾聴に必要な3つの基本的態度として「自己一致」「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」を挙げています。