共感疲労って何?
介護士は利用者から心ないことをいわれても、自分の感情を抑えて相手の気持ちを理解することが求められます。しかし、感情をコントロールし続けると「共感疲労」を起こす恐れがあるので、注意してくださいね。

心当たりはある?
「認知症の利用者と接しているときにイライラしたり、落ち込んだりして情けなくなった」「利用者やご家族からの理不尽な要求や心ない言葉に傷ついた」「慢性的な人手不足で思うようなケアができず、悔しい思いをした」「同僚の仕事ぶりに疑問を投げかけても、上司や管理職が真摯に向き合ってくれなかった」「会議で建設的な意見を提案しても聞き入れてもらえず、疲れ果てて仕事について前向きに考えられなくなった」「人の役に立ち、喜んでもらえる素晴らしい仕事だと思ったが、その日の業務をこなすだけで精一杯だった。しかし、ふと立ち止まって考えてみると、いつの間にか利用者に対して冷たく接するようになり、機械的に仕事をこなしていた」「忙しい中で利用者とうまくコミュニケーションがとれず言葉が荒くなった」「休日も職場から仕事の電話がかかってきて、落ち着いて休めない」といった思いをしたことはありませんか?もしかしたらそれ、共感疲労かもしれません。
共感疲労とは?
共感疲労とは、他者の苦しい状況や困難な出来事に過度に共感することで、自分自身が疲労感を覚えたり、ストレスを感じたりする心理的な反応を指します。
利用者は介護士のサポートを求めているため、介護士も「何とかしてあげなければ!」という気持ちになり、必要以上に利用者の気持ちに寄り添ってしまうことがあります。これは、介護士が社会福祉の価値観や倫理観を重視する職業であるために起こることですが、疲労が蓄積すると精神的な落ち着きを失い、その人らしさが失われてしまいます。その結果、仕事のミスが増え、さらに重大な事故を起こすリスクも高まってしまうんですね。そのまま放置すると「何もしたくない」「仕事を辞めたい」という思考に陥る「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になるリスクが高まります。
「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の研究が始まり
もともと、1992年にカーラ・ジョインソンが看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)に関する研究の中で、看護師が看護意欲や熱意を失っている状態に焦点を当てたのが始まりです。その後、1995年にチャールズ・フィグレーらが共感疲労の概念を確立し、他者が経験したトラウマティックな出来事について知ることによって引き起こされる自然な帰結としての行動と感情、トラウマを抱え苦しんでいる他者を助けることによるストレス、というふうに定義しました。
また、燃え尽き症候群は感情的な疲労の結果として徐々に現れるのに対し、共感疲労は突然、何の前触れもなく現れ、症状の回復が急速に進み、無力感、混乱、孤立感を伴うことも指摘しています。